はしごに登って下を見る…
遠い記憶のかけらですが、田舎のわたしが育った家には、たばこの乾燥室の天窓調整のためのはしごがありました。この梯子は長ーいのです。
普通はしごは二階に上がるためですが、この梯子は二階の天井に上がるためなので子供にとってはとてつもなく長いのです。
たぶん5歳くらいだと思うのですが、二つ上の姉と二つ下の弟と、年の順に上りました。はしごを手でつかむのですが子供の手には大きすぎて少ししかつかめず、とても恐いのです。
おそるおそる、ゆっくり登りました。小さくて運動神経も鈍い私でしたが、スリルはすきだったのでしょう。
みんなで登り終わって下を見ると、はるか下に感じてとにかく怖いのです。このスリルが好きでよく登りました。
上って下を見るだけです。
これが遊びでした。父も母も一日中畑でお昼ご飯の時しか家には帰りません。こうやって長い一日を兄弟姉妹で遊びました。
テレビもなく、おままごとやけんけんをして飽きたらこんなことをしていました。子供ながらの遊びの中のアクセントだったのでしょうか?
この絵は50歳になってから絵を学び始めて、ガッシュで描きました。家の周囲の景色は、思いいだしながら描きました。
周囲は夏なので青い実をつけたミカン畑でした。
タバコは子供背丈くらいになり、大きな葉は一枚づつとって縄にはさみこみ乾燥室につるし、火を入れて緑が黄色になるまで24時間2週間くらい焚き続けるのです。
この葉がたばこを吸う、あの茶色のタバコになるのです。
この梯子に登った時の、手でつかめなくで恐かったドキドキは今も思い出すたびに生々しく思い出します。